京町家 竜淵
この作品は、私が京都芸術短期大学を卒業する時に共作したものです。
この庭の住人は、日本文化をこよなく愛する外国人。
元々、幹肌の美しいキンモクセイの大木が一本だけあった、荒れ果てた京町屋の庭でした。
京都という古い歴史ある風土に、新しい命を吹き込む造園作業。
私は、温故知新の考えを基に庭造りを始めました。
犬走り(細長い通路)には、天然素材の深草三和土を。
砂・砂利・石灰といった3種類の材料を混ぜ合わせて、板でたたきつける伝統工法です。
そして、庭の中でも一際目を引くのが卵型の石。
矢跡が残るこの石は、カシの木の矢によってその姿となり、住人によって「ドラゴンエッグ」と名付けられました。
土を掘れば、三角形の花崗岩に当たり、その出てきた石もまた、庭を彩る顔の一つに。
竹の縁と三和土、ハギによる袖垣が建物と庭空間をやさしくつなぎます。
長い間本来の役割を終えていた石臼に新たに水を注ぎ設置。
石臼の歴史に水の深さを当てはめてみました。
そして名付けた庭の名は“竜淵”。
それは、水の神がひっそりと身を潜める深い水のある所を意味します。