太古の昔から、人は生活する場を作るために
野山を切り開き、木を植えたり、移植したり、石を置いたりして
人にとって、心地よい生活空間を作りだしてきた。
自然との付き合い方を考えながら
場づくりのための自然素材に敬意を表し
共に、生き続けることのできる空間を目指して
作り上げてきた結果が今の世界である。
こと日本では自然に対する思いが色濃く
それは、「木の移植」を行う際の技術に明瞭に表れる。
以下は、私が学生時代に研修作業で参加した
京都御苑の大径木移植工事の写真である。
巨大な木を苑内であるが、場を整備していくため
動かし、これからもより良い場であり続ける空間を
作るため行った工事である。
木、一本一本に対してその移植方法は微妙に違う。
数年前から移植に耐えれる木となるよう
それぞれに適した事前作業を行ことから始まる。
見えない土の部分、根の状態は掘り起こしてみないと
最終判断ができないという、ライブ感覚での決断が必要となる。
ものすごい次元での作業は、知識と経験によってカバーされ
その木が新しい場所で末永く生き続けるために
これまで培ってきた移植技術をすべて施していく。
この工事を機に、木に対する日本人の思いを
深く感じ取ることになった。
現在、機械や流通の発達によって
木の移動行為が容易に行われることもあり
すさまじい勢いで木が動いている。
それは、日本にとどまらす、外国まで及ぶはなしだ。
これまで、日本では見たことのない木が入ってきたり、
日本古来の木が海の向こうへ簡単に動く時代。
様々な思いがあり、賛否両論はあるが
そんな時代の先端で
私たち庭師は
木を動かし、空間を作っている。
自然とともに、自然の力を借りて
木と共に生き続ける事のできる
人が生活する空間。
そしてその裏側には、人と木が一緒に成長していける
環境づくり(手入れ)にも責任を持ち、木を動かします。
そんな空間作りを私は目指しています。